ロシア文学の銀の時代 — 象徴主義とアフマートワ
銀の時代は、1890年頃から1917年の革命までを指す。「銀の時代」は黄金時代に対する呼称である。19世紀の長篇小説の時代に対して、この25年ほどは詩の時代だった。
そして終わり方が異常である。1917年の革命以後、この時代の詩人たちを待っていたのは、亡命、自殺、収容所、銃殺だった。
黄金時代の小説から、詩へ主題が移った
黄金時代の小説は社会をどうすべきかを扱った。銀の時代の詩はそこから離れる。
がフランスから入る。ボードレール、ヴェルレーヌ、マラルメの影響下で、見えるものの背後に別の実在があるという前提が共有された。
ただしロシアの象徴主義には独自の色がある。宗教的・終末論的な傾向が強い。世界が終わり、何かが生まれるという予感が繰り返し書かれる。革命前夜の空気と結びついていた。
銀の時代の主な作品
| 作品 | 発表 | 作者 | 種類 |
|---|---|---|---|
| 『夕べ』 | 1912年 | アンナ・アフマートワ | 詩集 |
| ペテルブルグ | 1913年 | アンドレイ・ベールイ | 小説 |
| 『石』 | 1913年 | オシップ・マンデリシターム | 詩集 |
| 『ズボンをはいた雲』 | 1915年 | ウラジーミル・マヤコフスキー | 長詩 |
| 『十二』 | 1918年 | アレクサンドル・ブローク | 長詩 |
ブロークの『十二』(1918年)は、革命下のペテルブルクを行く十二人の赤衛兵を描き、最後にキリストがその先頭に立って現れる。解釈をめぐって論争が続いた。ブローク自身は革命を受け入れたが、数年後に衰弱して死んでいる。ベールイのペテルブルグ(1913年)は、爆弾を仕掛けるよう命じられた青年と、その父である高官を軸に、都市そのものが崩れていくような文体で書かれた。ジョイスのユリシーズと並べて論じられることがある。
象徴主義への反動として、アクメイズムと未来派が出た
アクメイズムは、象徴の彼方ではなくこの世界の事物の明確さを求めた。アフマートワとマンデリシタームがここに属する。言葉を曖昧にせず、具体的な物と身振りで書く。
未来派は逆に、言語そのものを壊しにいった。マヤコフスキーは音と視覚的な配置を使い、街頭で朗読するための詩を書いた。革命を全面的に支持し、宣伝詩やポスターの文句も手がけている。
批評の側でも、作品が何を語るかではなくどう作られているかを分析するが生まれた。20世紀の文学理論に広い影響を与えている。
詩人たちの結末に、20世紀ロシアの構造が表れている
この時代の詩人たちの結末を並べると、次の時代に何が起きたかが見える。
| 詩人 | 結末 |
|---|---|
| アレクサンドル・ブローク | 革命を受け入れたが、1921年に衰弱死 |
| ウラジーミル・マヤコフスキー | 革命の詩人として活動し、1930年に自殺 |
| セルゲイ・エセーニン | 農村を歌った詩人。1925年に自殺 |
| マリーナ・ツヴェターエワ | 亡命し、帰国後の1941年に自殺 |
| オシップ・マンデリシターム | スターリンを風刺した詩により逮捕。1938年、移送先で死亡 |
| アンナ・アフマートワ | 生き延びたが、夫は銃殺、息子は長く収容所にいた |
| イワン・ブーニン | 亡命。1933年、ロシア語作家として初のノーベル文学賞 |
アフマートワのレクイエムは、息子の面会のため刑務所前に並んだ日々から生まれた。書き留めれば証拠になるため、友人たちに暗誦させて保存したと伝えられる。 完全な形での国内刊行は、ソ連の末期になる。
銀の時代が残したのは、詩とその作者の運命
| 中身 | |
|---|---|
| 詩の時代 | 小説の世紀のあとに、25年ほど詩が突出した |
| 終末の予感 | ロシア象徴主義は宗教的・終末論的で、革命前夜と結びついた |
| 二つの反動 | 事物の明確さ(アクメイズム)と、言語の破壊(未来派) |
| 結末 | 亡命・自殺・処刑。作品の運命と作者の運命が重なる |