芥川龍之介
- 生没
- 1892–1927
- 国
- 日本
- 時代
- 近代
何をやったか
短篇に特化した作家である。 長篇をほとんど書かず、緊密に構成された短篇で評価を確立した。
素材の多くを古典から取っている。羅生門(一九一五年)と『鼻』は今昔物語集、『地獄変』は『宇治拾遺物語』が下敷きである。古い説話の骨格を借りて、近代人の心理を流し込むという方法を徹底した。
『藪の中』では、一つの殺人事件について複数の証言が食い違ったまま、真相が示されずに終わる。語り手の証言が信用できないという構造を用いた作品として、後年まで参照され続けている。
一九二七年、三十五歳で自殺した。「ぼんやりした不安」という言葉を遺書に残している。
文学史における位置
夏目漱石門下の新思潮派を代表する。当時主流だった自然主義や私小説が作者の身辺を告白する方向へ向かったのに対し、芥川は虚構を緻密に構成する方向を選んだ。この対立は日本近代文学の基本的な軸の一つである。
晩年、志賀直哉の「筋のない小説」を評価する発言をしており、構成重視の自身の方法に揺らぎが生じていたことがうかがえる。この時期の論争は「小説の筋」をめぐるものとして知られる。
彼の死は時代の転換点として語られてきた。 プロレタリア文学が台頭し、社会が不安定化していく時期と重なるためである。ただしこれは後年の文学史が与えた意味づけでもあり、死因を時代精神に還元しすぎることには注意が要る。
一九三五年、菊池寛が芥川賞を設立した。新人作家の登竜門として現在まで続いている。
代表作
- 羅生門(一九一五年)— 生きるための悪を扱う。今昔物語集が素材
- 『鼻』(一九一六年)— 漱石に激賞されて出世作となった
- 『藪の中』(一九二二年)— 食い違う証言。真相が示されない
- 『歯車』(一九二七年)— 死の直前の作。錯乱に近い感覚が書かれている
何から読むか
短篇なのでどこからでも入れる。羅生門と『鼻』は短く、構成の巧みさが分かりやすい。
そのうえで『藪の中』へ進むと、同じ作者が語りの信頼性そのものを崩しにかかっていることが見える。晩年の『歯車』まで読むと、初期の知的な構成が崩れていく過程まで追える。
著作権保護期間が満了しているため、青空文庫で全文を読める。