中島敦
- 生没
- 1909–1942
- 国
- 日本
- 時代
- 近代
何をやったか
中国の古典を素材に、近代人の自意識を書いた。 山月記(一九四二年)は唐代の説話『人虎伝』を下敷きに、詩人を志した男が虎になる話である。
主題は自尊心と羞恥心の絡み合いである。才能を信じきれず、しかし他人に交じることもできない。その臆病な自尊心が人を獣に変える、という論理が語られる。この心理の分析が精密で、教科書に長く採録されてきた。
漢文の素養が深く、文体も漢語を多用した硬質なものである。ほかに『李陵』『弟子』など、中国の史書を素材にした作品がある。
パラオの南洋庁に勤務した経験から、南方を舞台にした作品も残している。喘息の悪化により、一九四二年に三十三歳で没した。
文学史における位置
作家として活動した期間が極めて短い。 山月記を含む作品が世に出たのは没年である一九四二年前後に集中しており、生前の評価が定まる前に没している。
芥川龍之介と同様、古典を素材に近代的な主題を流し込む方法をとった。ただし芥川が日本の説話を多く用いたのに対し、中島は中国の古典に軸足を置く。
戦時下に書かれた作品だが、時局的な要素がほとんどない。 個人の内面の問題に集中しており、この点で同時代の多くの作品と性格を異にする。
山月記は現在も高校国語の教材として広く使われており、教育を通じて読まれ続けている作家である。
代表作
- 山月記(一九四二年)— 代表作。虎になった詩人
- 『李陵』(死後の一九四三年)— 漢の将軍と司馬遷
- 『名人伝』(一九四二年)— 弓の名人の話
何から読むか
山月記が短く、主題も明確である。十数ページで読める。
漢語が多く硬い文章だが、リズムがよく音読に向く。声に出すと読みやすくなる種類の文章である。
著作権保護期間が満了しているため、青空文庫で読める。
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