エミール・ゾラ
- 生没
- 1840–1902
- 国
- フランス
- 時代
- 19世紀
何をやったか
自然主義を理論化し、実作でも体系を作った。 一八八〇年の『実験小説論』で、小説家は医学者が実験するように人物を条件の中に置き、何が起こるかを観察せよと説いた。
『ルーゴン・マッカール叢書』は一八七一年から一八九三年まで、全二十巻。副題は「第二帝政下の一家族の自然的社会的歴史」で、一族五世代にわたって遺伝と環境の作用を追跡する構想である。オノレ・ド・バルザックの『人間喜劇』の体系構想を引き継ぎ、そこに科学を接ぎ木した。
一八九八年、ドレフュス事件で新聞に大統領宛の公開状を発表した。冒頭の語から「私は弾劾する」と呼ばれる。軍が無実のユダヤ人将校を陥れたと名指しで告発し、名誉毀損で有罪となってイギリスへ亡命した。
文学史における位置
自然主義の中心人物である。ただし今日の目で見れば、遺伝理論の部分は科学として支持されていない。 作品はその理論より強かった、というのが一般的な評価である。
「作家が自分の名声を賭けて政治的不正に介入する」という型は、ここで完成した。 サルトルもカミュもこの型の上に立っている。文学者の社会的役割という観点で、文学史を超えた影響を持つ。
日本への影響も大きいが、変形して受け取られた。 島崎藤村・田山花袋らの日本の自然主義は、社会の観察ではなく作者自身の告白へ向かい、私小説を生んだ。同じ名前で呼ばれているが、中身はほぼ逆である。
一九〇二年、自宅で一酸化炭素中毒により死亡した。暗殺説が消えていない。
代表作
- 『居酒屋』(一八七七年)— 洗濯女がアルコールに壊されていく
- 『ナナ』(一八八〇年)— 高級娼婦を主人公にした
- ジェルミナール(一八八五年)— 炭鉱のストライキ。労働運動小説の古典
- 『実験小説論』(一八八〇年)— 自然主義の理論
何から読むか
ジェルミナールが代表作とされる。炭鉱労働の描写と、群衆が一つの生き物のように動く場面が強く、社会小説として今も読める。
『居酒屋』は労働者の言葉をそのまま書いたことで当時批判を浴びた作品で、文体の実験としても読める。
二十巻を通読する必要はない。各巻は独立して読める構成になっている。
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