紫式部
- 生没
- 973頃–1014頃
- 国
- 日本
- 時代
- 中古
何をやったか
源氏物語を書いた。四百字詰め原稿用紙にしておよそ二千四百枚、登場人物は五百人近い。 主人公の光源氏が死んだ後も物語は続き、次の世代(薫と匂宮)の話になる。
書かれているのは恋愛の遍歴だが、実質的な主題は時間の経過と、それによって人が変わることである。若い頃の恋の相手が老い、権勢を得た者が没落し、かつての栄華が回想される。後半(宇治十帖)は色調が暗く、救いのない話になる。
宮廷に仕える女房として中宮彰子に仕え、その環境で書かれたと考えられている。『紫式部日記』も残しており、当時の宮廷の様子と、清少納言への辛辣な批評が書かれている。
文学史における位置
この作品の位置は、年代を並べると分かりやすい。
ヨーロッパで心理小説が始まる六百年以上前に、人の心の動きだけで長篇が書かれていたことになる。
ただし「世界最古の小説」と呼ばれることには注意が要る。「小説」の定義次第であり、より古い長篇散文は他の文明にもある。「現存する長篇物語として最も早い時期のものの一つ」と言うのが正確である。
書かれたのが仮名であることも重要である。当時、仮名は正式な文字(漢字・漢文)より格下とされ、女性のものとされていた。その格下の文字だったからこそ規範が無く、自由に書けたという逆説が、中古の文学を生んでいる。
後世への影響は大きい。近世には本居宣長がこの物語を「もののあはれ」を書いたものとして読み直し、作品を道徳の道具ではなく文学として読む批評の出発点になった。
代表作
何から読むか
原文は註なしでは読めないため、現代語訳から入るのが現実的である。訳者によって文体が大きく違うので、書店で読み比べる価値がある。
全訳は長いので、初読では抄訳や入門版で全体の筋と人物関係を掴んでから全訳に進む順序も機能する。