W・B・イェイツ

眼鏡をかけ、髪を乱したウィリアム・バトラー・イェイツの横顔の肖像写真。
ジョージ・チャールズ・ベレスフォード撮影
原綴
William Butler Yeats
生没
1865–1939
出身
アイルランド・ダブリン
イギリス
時代
20世紀以降

生涯

1865年、アイルランドの首都ダブリンに、画家の子として生まれた。少年期をロンドンと、母の故郷であるアイルランド西部の田舎で過ごした。この西部の風景と、そこに伝わるケルトの神話・伝承が、初期の詩の源泉になった。

若くして、アイルランド独自の文化を復興しようとする運動に加わった。当時アイルランドは、イギリスの支配下にあった。イェイツは、古い神話や民話を掘り起こし、それを文学によみがえらせることで、アイルランド人の精神的な独立をめざした。この動きは「アイルランド文芸復興」と呼ばれる。

生涯を通じて、女性革命家モード・ゴンへの、報われぬ恋を抱え続けた。この思いも、多くの詩を生んだ。アイルランドが独立へ向かう激動を生き、上院議員も務めた。1923年、ノーベル文学賞を受けた。1939年、フランスで没した。

作風

イェイツの詩は、生涯を通じて大きく変化した。初期は、ケルトの神話や伝説を題材にした、夢見るような、音楽的で象徴に富む詩を書いた。この世ならぬ美と、あこがれの世界が、うっとりとした調子でうたわれる。「イニスフリー湖島」は、都会を離れ、静かな湖の島に隠棲することを夢見た、初期の名詩である。

だが年を重ねるにつれ、その詩は、現実と歴史を見据えた、力強く簡潔なものへと変わっていった。アイルランドの独立をめぐる流血、恋の挫折、老いと死。そうした過酷な現実に向き合うなかで、夢見がちな美しさは影をひそめ、緊張に満ちた、骨太な詩が生まれた。

神秘思想が、その世界観を支えている。イェイツは、歴史が循環するという独自の思想体系を作り上げ、それを詩の背景に据えた。「再臨」は、一つの時代が終わり、恐ろしい新たな時代が始まろうとする予感を、荒々しいイメージでうたった。神話と現実、美と暴力が、その円熟期の詩では分かちがたく結びついている。

作品

『塔(The Tower)』(1928年)

円熟期のイェイツを代表する詩集である。老いと死、歴史の循環、そして芸術による永遠への希求といった主題を、力強い詩でうたった。永遠の芸術の都を夢見る「ビザンティウムへの船出」など、後期の代表作を収める。

詩「再臨(The Second Coming)」(1920年)

第一次大戦後の混乱を背景に、一つの時代の終わりと、恐ろしい新時代の到来を予感した詩である。「中心は保たれない」という一句は、秩序の崩壊を表す言葉として、繰り返し引かれてきた。

初期の詩集『葦間の風』は、ケルト的な象徴に満ちた、若き日のイェイツを示す。

文学史における立ち位置と影響

イェイツは、二十世紀を代表する英語詩人の一人として文学史に名を残す。十九世紀末の夢見がちな象徴主義から出発し、二十世紀の現実と向き合う力強い近代詩へと、みずからの詩を作り変えた。その生涯にわたる変化そのものが、詩の一つの時代の移り変わりを体現している。

アイルランド文芸復興を率いた点でも、その功績は大きい。文学を通して、支配された民族の精神的な自立をめざしたその営みは、後の被支配地域の文学にも、一つの範を示した。

神話と現実、美と暴力を結びつけたその円熟期の詩は、後の詩人に絶大な影響を与えた。老いてなお新しい詩を生み出し続けたイェイツは、生涯かけて成長した詩人の、稀有な例とされている。

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