ウォルター・スコット

白髪で、黄色いチョッキに黒い上着を着たウォルター・スコットの油彩肖像画。
ヘンリー・レイバーン筆
原綴
Walter Scott
生没
1771–1832
出身
スコットランド・エディンバラ
イギリス
時代
ロマン主義

生涯

1771年、スコットランドの首都エディンバラに生まれた。幼いころ病を患い、祖父母の田舎で養生した。この時期に親しんだ、スコットランドの古い民話や、国境地方に伝わる民謡・伝説が、後の作品の源泉になった。

はじめは、こうした民謡を収集・編纂し、また物語詩を書いて、詩人として名を上げた。『湖上の美人』などの物語詩は、大きな人気を博した。

やがて、詩から小説へと転じた。1814年、歴史小説『ウェイヴァリー』を匿名で発表し、爆発的な成功をおさめた。以後、次々と歴史小説を書き、当代随一の人気作家となった。晩年、出資していた事業の破産によって巨額の負債を負ったが、みずからの筆でその返済に努めた。過労がたたり、1832年に没した。

作風

スコットの小説の最大の功績は、歴史を、物語の主要な舞台に据えたことにある。それ以前にも、過去を扱った物語はあった。だがスコットは、特定の歴史的な時代を、その風俗、言葉、対立する勢力もろとも、克明に再現してみせた。読者は、その時代を、あたかも自分が生きているかのように体験することができた。

歴史の転換点を、好んで描いた。古い時代と新しい時代、対立する二つの勢力がぶつかり合う、その狭間を舞台にする。とりわけ、故郷スコットランドの、激動の歴史を繰り返し取り上げた。歴史の大きな流れと、そこに巻き込まれる個人の運命とを、重ね合わせて描いた。

架空の主人公と、実在の歴史とを、巧みに織り合わせた。物語の中心には、しばしば、平凡で穏健な、架空の青年が置かれる。この人物の目を通して、読者は、激しく対立する歴史の両陣営を、公平に見渡すことができる。歴史の大事件を、身近な人間の物語として語る手法である。

作品

『ウェイヴァリー(Waverley)』(1814年)

十八世紀、スコットランドで起きた反乱を舞台にした歴史小説である。イングランドの青年が、スコットランドの反乱に巻き込まれていく物語を通して、古い氏族社会と、新しい時代との対立を描いた。歴史小説というジャンルの、記念すべき出発点にあたる。

『アイヴァンホー(Ivanhoe)』(1819年)

中世イングランドを舞台に、騎士アイヴァンホーの冒険を描いた歴史ロマンである。ノルマン人とサクソン人の対立を背景に、騎士道の世界を華やかによみがえらせた。スコットの最も広く読まれた作品の一つである。

文学史における立ち位置と影響

スコットは、歴史小説というジャンルの創始者として文学史に名を残す。過去の時代を、生き生きとした細部とともに再現するその手法は、まったく新しいものだった。歴史を、単なる年代記ではなく、人間の生きた物語として描く道を、スコットは切り開いた。

その影響は、ヨーロッパ全土に及んだ。フランスのユゴーバルザック大デュマ、ロシアの作家たちなど、各国の作家がスコットに学び、みずからの国の歴史を小説に描いた。十九世紀のヨーロッパに歴史小説が花開いたのは、スコットが源流である。

歴史への関心を、文学を通して広く人々に呼び起こした点でも、その功績は大きい。国民が、自国の過去を物語として愛するようになる、その道筋をつけた。歴史小説の父として、その地位は揺るがない。

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