スタンダール
- 生没
- 1783–1842
- 国
- フランス
- 時代
- 19世紀
何をやったか
赤と黒(一八三〇年)を書いた。貧しい青年が野心のために感情を計算して使い、階級の壁に突き当たって死ぬ話である。副題は「一八三〇年代記」。
刊行はヴィクトル・ユゴーの『エルナニ』が騒乱を起こしたのと同じ年、つまりロマン主義の絶頂期にあたる。だが中身は熱狂とは逆で、冷徹な観察に貫かれている。
「小説とは道に沿って持ち歩く鏡だ」という趣旨のことを書いた。また自分は五十年後に読まれるだろうとも書いており、実際その通りになった。 生前の評価は低い。
『パルムの僧院』(一八三九年)は、主人公がワーテルローの戦場をさまよいながら、自分がいま何を見ているのか最後まで分からない、という場面から始まる。戦争を英雄的に描かない書き方の起点として、後の世紀に何度も参照された。
文学史における位置
流派のラベルが後付けであることの、最も分かりやすい例である。 教科書では「ロマン主義→写実主義」と直列に並ぶが、スタンダールはロマン主義の時代に写実主義的な小説を書いている。この時期、複数の方向が並走していた。
オノレ・ド・バルザックと並んで写実主義の先駆とされるが、方法は違う。バルザックが社会全体を体系として書こうとしたのに対し、スタンダールは一人の意識の内側の計算を追う。心理描写の細かさで言えば、後のギュスターヴ・フローベールやマルセル・プルーストにつながる系譜にある。
「エゴティスム」という語で自己観察を重視し、恋愛論『恋愛論』では感情が結晶化していく過程を分析した。感情を分析の対象にする態度が一貫している。
代表作
- 赤と黒(一八三〇年)— 代表作。野心と階級
- 『パルムの僧院』(一八三九年)— ワーテルローの場面が有名
- 『恋愛論』(一八二二年)— 恋愛感情の分析
何から読むか
赤と黒から入るのが順当である。野心を持った青年の話なので、二百年前の小説であることを忘れて読める。
現代日本語の新訳が複数出ており、十九世紀の長篇に初めて手を出す場合は読みやすさを優先して選ぶとよい。
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