老舎

原綴
老舎
生没
1899–1966
出身
北京
本名
舒慶春
中国
時代
近現代

生涯

1899年、北京の貧しい満洲族の家に生まれた。本名は舒慶春という。父は宮城を警備する下級の兵士だった。1900年、外国勢力の排斥を掲げた義和団の蜂起に列強が出兵し、北京が占領される。父はその戦闘で死んだ。老舎は母の内職によって育てられている。

苦学して師範学校を出て、小学校の校長や教育行政の職に就いた。

1924年、ロンドン大学東洋学院の中国語講師として招かれ、イギリスへ渡る。五年間の滞在中にディケンズをはじめとする英国小説を読み、自らも小説を書き始めた。最初の長篇はロンドンで書かれている。

帰国後、大学で教えながら執筆を続けた。1936年、教職を辞して専業作家になる。同じ年に駱駝祥子の連載を始めた。

日中戦争が始まると、抗日の文芸活動を組織する側に立った。戦後の1946年、アメリカ国務省の招きで渡米し、数年滞在している。

1949年の中華人民共和国の成立後、周恩来の要請で帰国した。以後、新体制のもとで人民芸術家として遇される。この時期に代表的な戯曲『茶館』を書いた。

1966年、が始まると、封建的・反動的な作家として糾弾された。紅衛兵——毛沢東の呼びかけに応じて旧来の文化を攻撃した学生の集団——による吊るし上げと暴行を受けた翌日、北京の湖で遺体となって発見された。自死とされる。六十七歳だった。名誉が回復されるのは、文革が終わった後である。

作風

老舎が書いたのは、北京の下層の人々である。

車夫、芸人、小商人、巡査、そして没落した旗人。旗人とは、清を建てた満洲族の軍事組織に属し、代々俸給を受けてきた家系を指す。清の滅亡でその俸給が絶えた。都市の底で暮らす人々の生活が、細部まで具体的に書かれる。老舎自身がその環境の出身であり、外から観察したのではない。

言葉に特徴がある。北京の話し言葉をそのまま文章にした。会話が生き生きとしており、その土地の口調とユーモアが文体を作っている。「京味」と呼ばれる北京らしさは、この作家によって文学の言葉として確立した。

そのユーモアは、悲惨と共存する。笑いを誘う語り口で、救いのない事態が進んでいく。駱駝祥子では、まじめに働いて自分の車を持とうとする青年が、軍にも警察にも社会にも搾り取られ、最後には人間としての誇りを失って堕ちていく。語り口は軽いが、結末は暗い。

社会への批判が根底にある。個人がどれほど努力しても、社会の仕組みがそれを許さない。祥子の破滅は、本人の弱さではなく、取り巻く制度によって導かれる。この構図は、同時代の魯迅とも共通する。

戯曲では、群像を並べる方法をとった。『茶館』は、一軒の茶館を舞台に、清末から中華民国期までの五十年を三幕で描く。主人公を立てず、茶館に出入りする多数の人物を通じて、時代そのものを見せる。

作品

『老張の哲学』(1926年)

ロンドンで書かれた最初の長篇である。

『猫城記』(1932年)

火星の猫の国を舞台にした諷刺小説で、当時の中国社会への批判を含む。

駱駝祥子(1936〜37年)

代表作である。田舎から北京に出てきた人力車夫の祥子が、自分の車を持つことだけを目標に働く。三度その望みが砕かれ、次第に荒廃していく。アメリカで英訳が出て国際的に知られたが、その英訳は結末を改変し、祥子が救われる形にしていた。

『四世同堂』(1944〜48年)

日本占領下の北京を舞台に、一つの四合院——中庭を四方から建物が囲む北京の伝統的な住宅で、複数の世帯が同居する——に住む人々の八年間を描いた大長篇である。

『茶館』(1957年)

代表的な戯曲で、北京人民芸術劇院の看板演目になった。

日本語では『駱駝祥子』と『茶館』が読める。

文学史における立ち位置と影響

老舎は、中国近代文学を代表する作家の一人である。魯迅茅盾巴金らと並ぶ位置に置かれる。

北京の話し言葉を文学の言葉にした点で、独自の位置を占める。地方の土地の言葉で書くという方向は、標準語による文学が主流になっていくなかで、それとは別の可能性を示した。

駱駝祥子は、都市の下層を描いた小説として、中国近代文学の代表作の一つになった。個人の努力が社会の構造に押し潰されるという主題は、自然主義の系譜とも接続して論じられる。

戯曲『茶館』は、20世紀中国演劇の最高峰とされる。舞台を一つに固定し、そこを通り過ぎる人々によって時代を描く方法は、以後の中国演劇に影響した。

その死は、文化大革命が知識人と作家に何をしたかを示す象徴的な事件として、繰り返し語られてきた。人民芸術家として遇されていた作家が、数年のうちに糾弾されて死に追いやられた経緯は、体制と文学者の関係の危うさを示している。

日本での受容も早い。戦前から翻訳があり、『駱駝祥子』は中国近代小説の入門として広く読まれてきた。

作品

登場する文学史