フョードル・ドストエフスキー
- 生没
- 1821–1881
- 国
- ロシア
- 時代
- 黄金時代
何をやったか
思想を持った人物同士を衝突させ、作者が答えを出さない小説を書いた。 登場人物がそれぞれ独自の思想を主張し、互いに反駁し合う。作者の見解がどれなのか特定できない構造になっている。
主題は一貫して、神が存在しないなら何をしてもよいのかという問いである。罪と罰(一八六六年)では、選ばれた者は法を超えてよいと考えた学生が老婆を殺し、その後の意識の崩壊が追跡される。
カラマーゾフの兄弟(一八八〇年)の「大審問官」の章は、自由と幸福は両立するかという問題を扱った独立した思想的挿話として、繰り返し論じられてきた。
一八四九年に政治犯として逮捕され、銃殺刑の直前で減刑されてシベリアに送られた。この経験が以後の作品を決定づけている。
文学史における位置
レフ・トルストイと並ぶロシア黄金時代の頂点である。二人はしばしば対比される。トルストイが外から見える世界を書いたのに対し、ドストエフスキーは意識の内側と思想の対立を書いた。
近代小説が扱える主題の範囲を決定的に広げた。 犯罪、狂気、信仰、自殺、屈辱といった主題を、道徳的な結論を与えずに扱った。
二十世紀への影響が大きい。実存主義は地下室の手記を先駆として繰り返し参照する。アルベール・カミュもジャン=ポール・サルトルも、この作家を出発点の一つに挙げている。
日本では明治期から読まれ、近代日本文学の形成に強い影響を与えた。
代表作
- 地下室の手記(一八六四年)— 実存主義の先駆とされる
- 罪と罰(一八六六年)— 代表作。殺人と意識の崩壊
- 『白痴』(一八六八〜六九年)— 「完全に美しい人間」を書く試み
- カラマーゾフの兄弟(一八八〇年)— 最後の長篇。大審問官の章
何から読むか
罪と罰から入るのが定番である。筋が明快で、犯罪小説としても読める。
地下室の手記は短いが、独白体で屈折が激しく、初読では戸惑いやすい。カラマーゾフの兄弟は長大なので、他を読んでからのほうがよい。
登場人物の名前(本名・父称・愛称)が入り乱れるため、人物一覧のある版を選ぶと読みやすい。
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