三島由紀夫
- 生没
- 1925–1970
- 国
- 日本
- 時代
- 現代
何をやったか
戦後の口語文が主流になった時代に、意図的に硬質な日本語を選んだ。 古典的な語彙と構文を保ちながら、極度に人工的で緻密な文体を作り上げている。
金閣寺(一九五六年)は、実際に起きた金閣寺放火事件を素材に、美に取り憑かれた青年がその美を焼くまでを書いた。美しすぎるものは自分の生を妨げるという論理が、精緻に構築されている。
小説だけでなく戯曲も多く書き、近代能楽集では能の主題を現代劇に翻案した。晩年は肉体鍛錬と政治活動に傾斜していく。
一九七〇年、自衛隊市ヶ谷駐屯地でクーデターを呼びかけ、失敗して自決した。
文学史における位置
戦後文学の中で特異な位置にある。同世代の多くが戦争体験を主題にしたのに対し、三島は美と観念の構築へ向かった。
海外での評価が早くから高く、日本文学の国際的な受容において大きな役割を果たした。 一時期ノーベル文学賞の有力候補とされたが、一九六八年の受賞は川端康成だった。
作家の死そのものが政治的事件になった、戦後で唯一の例である。 ただしこの事件をどう評価するかは今日まで定まっていない。文学としての達成と政治的行動をどう切り分けるかという問題は、フランスのセリーヌをめぐる議論と構造が似ており、議論は決着していない。 このサイトは事実を示すにとどめる。
代表作
- 『仮面の告白』(一九四九年)— 自伝的な形式で書かれた出世作
- 『潮騒』(一九五四年)— 明快な恋愛小説。三島の中では例外的に平明
- 金閣寺(一九五六年)— 美に取り憑かれた青年。代表作とされる
- 『豊饒の海』四部作(一九六五〜七一年)— 輪廻転生を軸にした最後の長篇
何から読むか
金閣寺が代表作だが、文体が濃密なので最初の一冊としては重い。『潮騒』は短く平明で、三島の文章の美しさだけを先に体験できる。
そのうえで金閣寺へ進むのが順当である。『豊饒の海』は四巻あり、自決の当日に最終巻を入稿したことが知られているが、分量的に初読向きではない。