太宰治
- 生没
- 1909–1948
- 国
- 日本
- 時代
- 近代
何をやったか
自分を語る文学の形式を、極限まで押し進めた。 私小説の系譜に立ちながら、そこで語られる「私」が信用できるかどうかを読者に疑わせる構造を作った。
作風の幅は広い。人間失格(一九四八年)や『斜陽』のような破滅的な作品が有名だが、『走れメロス』のような明快な作品も、『お伽草紙』のような古典の翻案もある。暗い作家という印象は代表作の偏りによるところが大きい。
一九四八年、人間失格を発表した年に玉川上水で入水し、三十八歳で没した。
文学史における位置
戦後の無頼派(新戯作派)に位置づけられる。坂口安吾らとともに、戦前の価値も戦後に与えられた民主主義の建前も、どちらも信じない立場を取った。
私小説との関係が重要である。田山花袋以来の私小説は「作者が正直に告白する」ことを前提としていた。太宰はその形式を使いながら、告白している「私」自身が道化を演じているという層を重ねた。告白の信頼性を疑わせる点で、単なる私小説の後継ではない。
三島由紀夫は太宰を強く批判したことで知られる。この対立は、自己を弱さとして提示する態度と、強さとして構築する態度の対立として文学史でしばしば言及される。
代表作
- 『走れメロス』(一九四〇年)— 教科書で最も読まれている
- 『津軽』(一九四四年)— 故郷を旅する紀行。明るい太宰が読める
- 『斜陽』(一九四七年)— 没落する華族の家族。「斜陽族」という語を生んだ
- 人間失格(一九四八年)— 人間らしく振る舞えない男の手記
何から読むか
人間失格から入る読者が多いが、先に『津軽』や『走れメロス』を読むと印象が変わる。 破滅の作家という枠に収まらない幅が見えるためである。
そのうえで人間失格を読むと、あの暗さが素の告白ではなく構成された作品であることが分かりやすい。
著作権保護期間が満了しているため、青空文庫で全文を読める。