井原西鶴
- 生没
- 1642–1693
- 国
- 日本
- 時代
- 近世
何をやったか
俳諧師として出発した。 一昼夜に何句詠めるかを競う興行で、二万三千五百句を詠んだという記録がある。速度そのものを芸にするという発想の持ち主である。
その速度を散文に持ち込んだのが好色一代男(一六八二年)で、浮世草子と呼ばれる新しいジャンルを開いた。主人公が七歳から六十歳まで女性遍歴を重ね、最後は女護島へ船出する。
本領は恋愛ではなく経済にある。 『日本永代蔵』『世間胸算用』では、どうやって金を貯めたか、どうやって破産したか、大晦日の借金取りをどう追い返すかが主題になる。
文体は短く、切り詰められ、感傷がない。人間を金の動きを通して観察するという視線が一貫している。
文学史における位置
近世文学を代表する。商業出版が成立し、町人が本を買うようになった時代の文学であり、主題が金と色であることはその市場構造と直結している。
同時期のオノレ・ド・バルザック(19世紀フランス)と主題の面で重なる点がしばしば指摘される。直接の関係はないが、商業社会が成熟すると文学が金を主題にするという点は共通する。
松尾芭蕉とはほぼ同時代である。同じ俳諧の世界から出て、一方は詩の高みへ、一方は散文の速度へ向かったという対比になる。
近代に入って再評価され、樋口一葉の擬古文にも影響を与えている。
代表作
- 好色一代男(一六八二年)— 浮世草子の出発点
- 『好色五人女』(一六八六年)— 実際の事件を素材にした五篇
- 『日本永代蔵』(一六八八年)— 金儲けの話
- 『世間胸算用』(一六九二年)— 大晦日の借金取り
何から読むか
短篇集の形式のものが入りやすい。 『日本永代蔵』『世間胸算用』は一話が短く、金をめぐる人間の観察が明快である。
原文は註がないと難しい。現代語訳との対訳版を選ぶと、切り詰められた文体の速度も味わえる。
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