安部公房
- 生没
- 1924–1993
- 国
- 日本
- 時代
- 現代
何をやったか
日本的な風土性を意図的に消した。 砂の女(一九六二年)は、砂丘の穴の底の家に閉じ込められた男の話である。地名も時代も曖昧で、どこの国の話としても読める構造になっている。
この選択には効果があった。翻訳で失われるものが少ないため、国際的に広く読まれた。 日本の作家としては例外的な受容のされ方である。
主題は一貫して、存在の不確かさと、社会からの疎外である。『壁』では主人公が自分の名前を失い、『他人の顔』では顔を失った男が仮面を作る。いずれも寓話の形式をとる。
小説だけでなく戯曲も多く書き、自ら劇団を主宰して演出も手がけた。写真や電子音楽にも関心を持っている。
文学史における位置
カフカとの近さがしばしば指摘される。 説明を欠いた不条理な状況に人物が投げ込まれるという構造が共通するためである。ただし影響関係を単純化することには注意が要る。
戦後日本文学の中では、私小説の伝統から最も遠い位置にある。作者の身辺を書くのではなく、抽象的な状況設定によって普遍的な問題を扱う方向である。
大江健三郎と並んで、戦後の日本文学を国際的な文脈へ接続した作家とされる。ノーベル文学賞の有力候補と目されていたが、受賞前に没した。
満洲(現在の中国東北部)で育った経歴があり、故郷を持たない感覚が作品の背景にあるとする読みは広く行われている。
代表作
- 『壁』(一九五一年)— 芥川賞受賞作。名前を失う話
- 砂の女(一九六二年)— 代表作。国際的に最も読まれた
- 『他人の顔』(一九六四年)— 顔を失った男
- 『友達』(一九六七年)— 戯曲
何から読むか
砂の女から入るのが定番である。設定が単純で、状況の異様さがすぐ伝わる。
寓話なので、筋の背後にある意味を読み解こうとしすぎると窮屈になる。 まず状況そのものの不気味さを味わう読み方でよい。