三銃士

原題
Les Trois Mousquetaires
作者
アレクサンドル・デュマ(大デュマ)
成立
1844
フランス
時代
19世紀

概要

1844年3月から7月にかけて、新聞『ル・シエクル』に連載された長篇小説である。翌年から続篇の二十年後、さらにブラジュロンヌ子爵が書かれ、三部作をなす。

舞台は1625年から1628年のフランス。国王ルイ十三世と、実権を握る宰相リシュリュー枢機卿が対立している時期にあたる。銃士隊は国王の護衛部隊で、リシュリューにも自前の親衛隊があり、両者は路上でしばしば衝突していた。

主人公ダルタニャンは、フランス南西部ガスコーニュの貧しい貴族の息子である。銃士隊に入るためパリに出て、アトス、ポルトス、アラミスの三人と知り合う。四人は王妃アンヌ・ドートリッシュをめぐる政治の争いに巻き込まれていく。

題名は三銃士だが、主人公はダルタニャンで、四人目にあたる。

新聞連載として書かれた。1836年以降、フランスの新聞は購読料を下げて部数を増やす経営に変わり、読者をつなぎとめる小説の連載が重要になっていた。この形式で書かれた小説をロマン・フイユトンという。各回の終わりに続きが気になる場面を置く書き方は、この形式の要請から生まれている。

素材は17世紀末に出た『ダルタニャン氏の回想録』である。実在した銃士シャルル・ド・バッツ=カステルモール、通称ダルタニャンをもとに、クルティルズ・ド・サンドラという作家が書いた半ば創作の書物で、デュマはマルセイユの図書館でこれを見つけた。アトス、ポルトス、アラミスの名もこの本に出てくる。

執筆にはオーギュスト・マケが加わった。マケが資料調べと筋の下書きを担当し、デュマが文章を書く。同じ体制でモンテ・クリスト伯も書かれた。マケは後に共著者としての権利を求めて訴訟を起こし、金銭は得たが署名は認められなかった。

文学史における評価と影響

歴史上の事件と人物のあいだに架空の主人公を置く形式が、この作品で完成した。ルイ十三世、リシュリュー、バッキンガム公、王妃はいずれも実在の人物で、飾り紐の挿話も当時の回想録に類話がある。そこに架空のダルタニャンを入れることで、読者は歴史の内側にいるように読める。

四人の性格の書き分けも、後の集団を描く物語の型になった。無鉄砲な新参者、寡黙で過去を持つ年長者、単純で見栄っ張りな大男、聖職者を志す優男。この組み合わせは繰り返し使われている。

ミレディの造形も指摘される。19世紀の小説で、女性が策略の主体として最後まで動き続ける例は多くない。処刑の場面は、法によらない私的な裁きであり、四人の側の行為をどう見るかで読みが分かれる。

同時代の文学からの評価は低かった。新聞連載小説は文学として扱われず、デュマの作品が研究の対象になるのは20世紀後半以降である。2002年、デュマの遺骨はパンテオンに移された。

映画・ドラマ・漫画の原作として繰り返し使われている。

あらすじ

1625年4月、十八歳のダルタニャンが、父から譲られた黄色い馬に乗ってパリへ向かう。父の紹介状を持ち、銃士隊長トレヴィルを訪ねるつもりでいる。

途中の宿場で、片方の目の周りに傷のある男を侮辱と受け取り、決闘を挑んで打ちのめされる。そのあいだに紹介状を盗まれる。この男は後にリシュリューの手先として何度も現れる。

パリで、ダルタニャンは一日のうちに三人の銃士と決闘の約束をしてしまう。アトスは肩の傷にぶつかったこと、ポルトスは肩掛けの裏地を見られたこと、アラミスはハンカチを拾って女性の名を口にしたことによる。

決闘の場に四人が揃ったところへ、枢機卿の親衛隊が現れる。決闘は禁止されており、全員を逮捕すると言う。ダルタニャンは三人の側に立って戦い、五対四で勝つ。ここから四人の関係が始まる。合言葉は、一人は皆のため、皆は一人のため。

ダルタニャンは下宿の主人の妻ボナシュー夫人と知り合う。王妃付きの女官で、王妃の私事を扱っている。夫人から、王妃が窮地にあると聞かされる。

王妃アンヌ・ドートリッシュは、イギリスの実力者バッキンガム公に、記念としてダイヤモンドの飾り紐を贈っていた。リシュリューはこれを知り、国王に舞踏会を開かせて、その飾り紐を着けてくるよう王妃に求めさせる。王妃は着けられない。不貞の証拠になる。

ダルタニャンと三人はロンドンへ向かう。道中、リシュリューの手の者に次々と妨害される。ポルトスは決闘で足止めされ、アラミスは負傷し、アトスは酒場で捕らえられる。ダルタニャンだけがロンドンに着く。

バッキンガム公は飾り紐を渡すが、二房が切り取られている。舞踏会でミレディ・ド・ウィンターという女が盗んだのだった。公は宝石職人を呼び、二房を作らせる。ダルタニャンは間に合い、王妃は飾り紐を着けて舞踏会に出る。

ミレディがリシュリューの手先として動いている。ダルタニャンは、その左肩に百合の花の焼き印があるのを見る。犯罪者に押される烙印である。ミレディはダルタニャンを殺そうとする。

アトスが自分の過去を語る。若いころ、身分を隠した娘と結婚したが、狩りの最中に妻が倒れ、服を裂いたところ肩に烙印があった。アトスはその場で妻を木に吊るした。その女がミレディである。

イギリスとの戦争が始まり、四人はラ・ロシェル包囲戦に参加する。ボナシュー夫人は修道院に匿われている。リシュリューはミレディに、バッキンガム公の暗殺を命じる。

ミレディはイギリスで軟禁されるが、監視役の将校フェルトンを説き伏せ、逃亡する。フェルトンはバッキンガム公を刺殺する。

ミレディはフランスに戻り、修道院にいるボナシュー夫人を毒殺する。

四人はミレディを追い、捕らえる。アトスの弟でもある元夫の弟、フェルトンの上官、そして烙印を押した死刑執行人が集まり、川辺で裁きが行われる。ミレディは処刑される。

ダルタニャンはリシュリューに呼び出される。だがリシュリューは、その働きを認めて銃士隊の副隊長の任命状を渡す。ダルタニャンは三度辞退し、三人はいずれも受けず、結局ダルタニャンが受け取る。

三人はそれぞれ去る。アトスは領地に、ポルトスは裕福な未亡人と結婚し、アラミスは修道院に入る。ダルタニャンだけが軍務に残る。

作者

登場する文学史