二十年後
- 作者
- アレクサンドル・デュマ(大デュマ)
- 成立
- 1845
- 国
- フランス
- 時代
- 19世紀
概要
『三銃士』の続篇であり、二十年後に再会した銃士たちの活躍を描いた小説である。
デュマの三銃士は、大成功をおさめた。この『二十年後』は、その物語の続篇にあたる。 前作の事件から、およそ二十年の歳月が流れている。
かつての若い銃士たちは、みな中年になっている。ダルタニャンはなお近衛の副隊長のまま、うだつが上がらずにいる。 一方アトス、ポルトス、アラミスの三人は、それぞれ別の道を歩み、銃士隊を離れていた。
物語の背景となるのがフロンドの乱である。幼い国王ルイ十四世の治世、宰相マザランの専制に対して、貴族や高等法院が反乱を起こした、この内乱のさなかに、物語は展開する。四人の旧友はこの動乱のなかで、政治的な立場を異にしながら、再会する。
前半、ダルタニャンは、旧友たちを探し出し、ふたたび力を合わせようとする。だが後半、フロンドの乱をめぐって、四人は、対立する陣営に分かれてしまう。 かつて「一人は皆のために、皆は一人のために」と誓った友情が政治の対立によって、試される。
さらに前作の宿敵ミレディの息子モードントが、母の復讐のために、四人に襲いかかる。歳を重ねた銃士たちの友情と武勇が、ふたたび描かれる。
文学史における評価と影響
デュマの「ダルタニャン物語」三部作の第二部であり、続篇として高い評価を受ける作品にあたる。
三銃士が、若さと冒険の物語だったのに対し、この続篇は、歳月を経た者たちの物語である。かつて颯爽としていた銃士たちは、みな中年になり、それぞれの人生を歩んでいる。青春の輝きと、それが過ぎ去った後の哀愁が、対比される。
主題は時の流れと、変わらぬ友情である。二十年という歳月は四人を変え、時に対立させる。だがその根底にある友情は、変わらない。歳を重ねてなお危機に際して力を合わせる旧友たちの姿に、この作品の魅力がある。
史実との結びつきもデュマの巧みさを示す。フロンドの乱という実際の内乱を背景に、架空の銃士たちの活躍が織り込まれる。歴史の大きな流れのなかに、生き生きとした人物を配する、デュマの手法が、ここでも冴えている。
三部作はこの後、ブラジュロンヌ子爵へと続く。若さの三銃士、円熟の『二十年後』、そして老いと終焉のブラジュロンヌ子爵。 三部を通じて、デュマは、四人の銃士の青春から死までの全生涯を描き切った。その中間をなす、重要な作品である。
あらすじ
『三銃士』の事件から、二十年後。フランスは幼い国王ルイ十四世の時代を迎え、宰相マザランが、実権を握っていた。
かつての若き銃士ダルタニャンは、今や中年になり、なお近衛銃士隊の副隊長のまま、出世できずにいた。その才を持て余していた彼に、宰相マザランが、密命を与える。 迫りくる貴族の反乱に備え、かつての名高い銃士仲間を、探し出して、味方につけよ、というのである。
ダルタニャンは二十年会っていない、三人の旧友を、訪ね歩く。
アトスは領地に隠棲し、養子のラウル(後の主人公)を育てながら、静かに暮らしていた。ポルトスは裕福な結婚をして、田舎の領主となっていたが、退屈を持て余していた。そしてアラミスは、僧職に就いていたが、その裏で、政治の陰謀に、深く関わっていた。
やがてフランスはフロンドの乱という内乱に、突入する。宰相マザランの専制に対し、貴族や高等法院が、反旗をひるがえしたのである。
この動乱のなかで、四人の旧友の立場は、二つに分かれてしまう。ダルタニャンとポルトスは、宰相マザラン(王権)の側につき、アトスとアラミスは、反乱を起こしたフロンド党の側につく。かつて固い友情で結ばれた四人が、政治の対立によって、敵味方に分かれてしまう。
対立しながらも彼らの友情は、失われない。危機に際しては立場を超えて、互いを助け合う。 その姿に、変わらぬ絆の強さが、描かれる。
さらに四人には過去からの脅威が迫っていた。前作で彼らが処刑した宿敵ミレディの息子、モードントである。 母の復讐に燃えるモードントは、執拗に、四人の命を狙う。
物語はフロンドの乱の混乱、イギリスのピューリタン革命(チャールズ一世の処刑)への関与、そしてモードントとの死闘を、めまぐるしく描いていく。
歳を重ねた銃士たちはその武勇と機知で、数々の危機を、くぐり抜けていく。若き日の輝きは薄れても、その友情と勇気は、変わらない。 動乱の時代を舞台に、旧友たちの活躍を描いて、物語は、次のブラジュロンヌ子爵へと、続いていく。