ロレンス・スターン

- 原綴
- Laurence Sterne
- 生没
- 1713–1768
- 出身
- アイルランド・クロンメル(現・ティペラリー県)
- 国
- イギリス
- 時代
- 17-18世紀
生涯
1713年、軍人の父の任地であるアイルランドのクロンメルに生まれた。ケンブリッジ大学に学んだのち、北イングランドのヨークシャーで国教会の牧師を務めた。
四十代の半ばに『トリストラム・シャンディ』の刊行を始めると、その奇抜な作品はたちまち評判を呼び、無名の田舎牧師は一躍、時代の寵児になった。もともと患っていた肺の病が進み、ロンドンで五十四歳の生涯を閉じている。
作風
小説の約束事を、正面から壊してみせた作家である。物語はまっすぐ進まず、わずかな出来事のたびに来歴や理屈へ横道にそれ、脱線が脱線を呼ぶ。時間の順序は崩れ、生まれる前の話がなかなか終わらない。
さらに、真っ黒に塗りつぶした頁や、白紙の頁、大理石模様の頁を挿し込むなど、印刷そのものを表現に使った。語り手はたえず読者に話しかけ、自分が今どう書いているかを実況する。作り物であることを隠さない、自意識的な語りである。
作品
トリストラム・シャンディ(The Life and Opinions of Tristram Shandy, Gentleman)(1759-67年)は、語り手トリストラムが自分の一生を語ろうとする自伝の体裁をとる。ところが脱線が続き、当人はなかなか生まれてすら来ない。筋を語ることよりも、脱線し続けることそのものが作品になっている。
旅の見聞と感傷をつづった『センチメンタル・ジャーニー(A Sentimental Journey)』も広く読まれた。
文学史における立ち位置と影響
スターンは、小説がまだ形を整えつつあった18世紀に、その約束事を早くも解体してみせた特異な存在である。時間を崩し、意識の流れをたどり、作り物であることをあらわにする手法は、当時は奇書とされながらも、20世紀のモダニズムや、その後の実験的な小説を先取りするものだった(モダニズム)。
そのため近代以降、ジョイスら前衛的な作家や批評家によって繰り返し読み直され、「小説とは何か」を問う作品の先駆として高く評価されている。