クリストファー・マーロウ

金の飾りボタンの並ぶ黒い上着に白い折り襟をつけた若い男性の油彩肖像画。左上に1585年と銘がある。
ケンブリッジに伝わる肖像。マーロウとされるが本人とは確定していない
原綴
Christopher Marlowe
生没
1564–1593
出身
ケント州カンタベリー
イギリス
時代
ルネサンス

生涯

1564年、ケント州カンタベリーの靴職人の家に生まれた。シェイクスピアと同じ年の生まれである。奨学金を得てケンブリッジ大学に学んだが、在学中にしばしば大学を離れており、政府の密偵として働いていたとする説がある。

1580年代の末からロンドンの劇場のために書き始め、たちまち評判をとった。だが1593年、無神論やスパイ活動の嫌疑がかけられるさなか、ロンドン近郊の宿で口論の末に刺され、二十九歳で死んだ。その死には、単なる喧嘩ではなく政治的な暗殺だったとする見方もあり、真相は分かっていない。

作風

主人公はいずれも、権力・知識・富といったものを限りなく求めて突き進み、そのために身を滅ぼす。人間の際限のない野望を、大きな身ぶりで舞台に載せた。

言葉の面では、脚韻を踏まない一行十音節の詩(無韻詩)を、力強い響きをもつ演劇の言葉として鍛え上げた。それまで韻文劇の主流だった軽い調子に代えて、この重厚な一行を確立した功績は大きい。

作品

フォースタス博士(Doctor Faustus)は、あらゆる学問を究めた博士が、さらなる知識と力を求めて悪魔に魂を売り、二十四年の期限ののちに地獄へ引き渡される物語である。知への欲望と、その代償への恐れが、激しい独白で語られる。

征服者の野望を描いた『タンバレイン大王(Tamburlaine the Great)』で名を上げ、金と復讐に取り憑かれた男を描く『マルタ島のユダヤ人(The Jew of Malta)』、王の悲劇『エドワード二世(Edward II)』を残した。

文学史における立ち位置と影響

マーロウは、シェイクスピアが本格的に書き始める直前に、英語演劇の言葉と型を用意した最も重要な先駆者である。無韻詩を劇の中心に据えたことで、以後の劇作家はこの言葉の上に作品を築けるようになった。

魂を売るフォースタスの物語は、後世に繰り返し扱われる主題になった。若くして横死したこととあいまって、その生涯と作品は、規範を踏み越えて突き進む人間の像として今も強く記憶されている。

作品

登場する文学史