鴨長明
- 生没
- 1155頃–1216
- 国
- 日本
- 時代
- 中世
何をやったか
方丈記(一二一二年)を書いた。川の流れを引いて無常を語る冒頭が知られているが、本文の中心は災害の記録である。
安元の大火、治承の辻風、養和の飢饉、元暦の大地震。それぞれについて何が起きたかを具体的に書いている。飢饉の際には都で四万人以上の死者を数えたという記述がある。
抽象的に無常を説くのではなく、実際に世界が壊れる場面を見た人間の報告になっている。 そのうえで方丈(三メートル四方)の小屋に隠棲する。
しかし末尾で自問する。閑居を楽しむこの心も、執着ではないのか。 答えを出さずに終わる。
下鴨神社の社家に生まれたが、望んだ地位を得られずに出家した経緯がある。
文学史における位置
枕草子(清少納言)・徒然草(吉田兼好)とあわせて三大随筆と呼ばれる。三つの中では中間に位置する。
隠者の文学を代表する。世俗を離れた者が書くという形式は中世に特徴的で、吉田兼好や西行と共通する。
文体は和漢混淆文である。漢語の硬さと和文の流れを混ぜたこの文体は、この時代に確立し、今日の日本語の散文の基礎になった。
自分の思想を自分で疑って終わる構造は、後の日本の随筆に受け継がれた。吉田兼好の断定と撤回の反復とも通じる。
代表作
- 方丈記(一二一二年)— 災害の記録と隠遁
何から読むか
極めて短い。 原稿用紙にして数十枚程度で、註付きの版なら一時間ほどで読める。
冒頭の無常観だけが有名だが、中盤の災害の記録こそが本領である。 具体的な描写の力を確認する読み方を勧める。