恋愛詩集

原題
Les Amours
作者
ピエール・ド・ロンサール
成立
1552
フランス
時代
16世紀

概要

ロンサールが、一人の女性への恋を主題に連ねたソネットの詩集である。1552年に刊行され、以後も相手を変えて書き継がれた。最初がカサンドル、次いでマリー、晩年にエレーヌと、三つの連作が知られる。

用いられているのはである。十四行を四・四・三・三に組む、イタリア由来の形式で、デュ・ベレーが『フランス語の擁護と顕揚』で取り入れを説いたものにあたる。ロンサールはこれを大量に実作し、フランス語の詩形として定着させた。

主題は恋だが、そこに必ず時間が絡む。相手の美しさをうたいながら、それがやがて失われることを見つめる。恋の高揚と、時が過ぎるという冷たい事実が、同じ十四行の中で重ねられる

文学史における評価と影響

プレイヤード派の綱領を、実作で証明した詩集である。デュ・ベレーが理論で「フランス語も古典に並べる」と説いたのに対し、ロンサールはそれを作品で示した。以後、ソネットはフランス詩の主要な形式の一つになる。

ただし評価は時代によって揺れた。17世紀にマレルブが明晰さを掲げて以降、ロンサールの豊かな語彙と凝った技巧は「過剰」とされ、二百年にわたって低く扱われる。ふたたび高く評価されるのは、感情と想像力を重んじる19世紀のロマン主義が、その抒情を再発見してからである。同じ作品が、時代の美意識によって評価を上下させた代表例といえる。

内容

最もよく知られるのが、エレーヌに寄せた一篇である。あなたが年老いて、夕べに蝋燭のもとで糸を紡ぎながら、私の詩を口ずさんで「ロンサールが、私の美しかった頃をうたってくれた」と言うだろう——そう語りかける。老いた未来の相手を今から描いてみせることで、いま愛を受け入れよと促す。

もう一篇、広く知られるのが薔薇の詩である。朝に開いた薔薇が夕には散っているさまを見せ、あなたの若さも同じだと告げる。古代ローマの詩から受け継いだ「いまを摘め」という主題を、フランス語の調べで歌い直したものである。

作者