坂口安吾
- 生没
- 1906–1955
- 国
- 日本
- 時代
- 近代
何をやったか
敗戦直後の価値の空白に、正面から答えを出した。 「堕落論」(一九四六年)で、日本人は堕ちるところまで堕ちて、そこから自分自身を発見するしかない、と論じた。天皇制も武士道も、人間の弱さを覆い隠す装置にすぎない、という主張である。
焼跡の現実に対して、この主張は強い説得力を持った。戦前の価値も、戦後に与えられた民主主義の建前も、どちらも信じないという立場が明確に示されている。
小説では『白痴』『桜の森の満開の下』などがある。後者は、桜の下で人が孤独と恐怖に襲われるという主題を扱った幻想的な作品である。
推理小説、時代小説、歴史随筆など、扱う領域が広い。一つのジャンルに収まらない書き手である。
文学史における位置
太宰治・織田作之助らとともに無頼派(新戯作派)に位置づけられる。既成の文学の枠組みを拒み、退廃的な生活を送った作家群を指す呼称である。
ただしこの呼称は後から与えられたもので、当人たちが集団を形成していたわけではない。 実際、坂口の論理は太宰の自己劇化とはかなり性質が違う。
「堕落論」は文学作品というより思想的な提言として読まれてきた。戦後の価値転換を最も早く言語化した文章の一つであり、現代日本文学の出発点として繰り返し参照される。
一九四六年、銀座のバーで太宰治らと撮られた写真が残っており、戦後文学の出発点を象徴する一枚として知られている。
代表作
- 「堕落論」(一九四六年)— 代表作。戦後の価値転換を論じた
- 『白痴』(一九四六年)— 戦時下の男女
- 『桜の森の満開の下』(一九四七年)— 幻想的な短篇
- 『日本文化私観』(一九四二年)— 戦時下に書かれた文化論
何から読むか
「堕落論」が短く、主張も明快である。戦後の日本を理解する資料としても読める。
小説なら『桜の森の満開の下』が短く、坂口の別の面(幻想性)が分かる。
著作権保護期間が満了しているため、青空文庫で読める。