コンシュエロ
- 作者
- ジョルジュ・サンド
- 成立
- 1842-1843
- 国
- フランス
- 時代
- 19世紀
概要
天才的な歌姫のヨーロッパをめぐる遍歴を描いた、壮大な長篇小説である。
ジョルジュ・サンドは、レリアのような内省的な作品から、魔の沼のような素朴な田園小説まで、幅広い作品を書いた。この『コンシュエロ』は、その大作の系譜に属する、波瀾万丈の物語にあたる。
主人公コンシュエロはヴェネツィアの貧しい生まれの歌手志望の少女である。美貌には恵まれないが天から与えられた、比類ない歌の才能を、持っている。 音楽学校で、彼女は、その才能を、開花させていく。
物語は十八世紀のヨーロッパを、舞台にする。ヴェネツィアの音楽の世界に始まり、ボヘミアの古城、そしてウィーンの宮廷へと、コンシュエロの遍歴は、広がっていく。恋の裏切り、身分の壁、そして秘密結社をめぐる陰謀。さまざまな試練が彼女を、待ち受ける。
コンシュエロは幼なじみの歌手アンゾレートに裏切られ、旅の途中、ボヘミアの伯爵家で、狂気に憑かれた青年貴族アルベールと出会う。才能と、誠実さと、独立した精神を持つコンシュエロは、恋と芸術と運命のあいだで、自らの道を、切り開いていく。
芸術家としての女性の自立という、サンドらしい主題が、壮大な歴史ロマンの枠組みのなかで、描かれている。
文学史における評価と影響
ジョルジュ・サンドの代表的な大作であり、その物語作家としての力量を示す作品とされる。
この小説の魅力は壮大な歴史ロマンとしての面白さにある。十八世紀のヨーロッパを舞台に、ヴェネツィアからボヘミア、ウィーンへと展開する、波瀾万丈の物語。音楽の世界、貴族社会、秘密結社の陰謀。 サンドは、その豊かな想像力で、めくるめく冒険と恋の物語を、織り上げた。
主題は芸術家としての女性の自立である。主人公コンシュエロは貧しい生まれでありながら、天与の才能によって、身を立てていく。彼女は恋にも身分にも運命にも、流されることなく、芸術家としての誇りと、独立した精神を、貫く。 サンド自身の自立した女性の生き方が、投影されている。
音楽への深い愛がこの作品を彩っている。サンドはショパンをはじめ、多くの音楽家と交流した。その音楽への造詣が歌姫コンシュエロの物語に、確かな厚みを与えている。
思想的な側面も見逃せない。物語には当時サンドが関心を抱いていた、社会改良や、神秘思想、秘密結社などの要素が、織り込まれている。単なる娯楽小説ではなく、サンドの思想を盛り込んだ大作として、続篇『ルドルシュタット伯爵夫人』とともに、読まれてきた。
あらすじ
十八世紀、ヴェネツィア。貧しい生まれの少女コンシュエロは、音楽学校で、歌を学んでいた。器量はけっして美しくない。だが彼女には天から授かった、比類ない歌の才能が、あった。 そして清らかで、誠実な、美しい心を、持っていた。
コンシュエロには幼なじみのアンゾレートという、恋人がいた。彼もまた歌手を志す青年だった。二人は将来を、誓い合っていた。
だがコンシュエロがその才能によって、歌手として頭角を現し始めると、アンゾレートは嫉妬と、野心から、彼女を、裏切る。 別の有力な女性に、取り入ろうとしたのである。コンシュエロは深く傷つき、ヴェネツィアを、去る。
旅の途中、コンシュエロは、ボヘミア(今のチェコ)の古い城に、身を寄せる。そこは名門の貴族、ルドルシュタット家の城だった。
この城で、コンシュエロは、一人の青年貴族、アルベール伯爵と、出会う。アルベールは深い精神性を持つ人物だったが、しばしば狂気に憑かれ、姿を消しては、城の地下の洞窟に、こもってしまう。周囲は彼を、狂人として、恐れていた。
だがコンシュエロはその常人には理解されぬアルベールの孤独な魂に、しだいに心を通わせていく。彼女の誠実で、澄んだ心が、狂気の青年を、慰め、癒していく。 アルベールは、コンシュエロを、深く愛するようになる。
やがてコンシュエロの遍歴は、さらに広がる。彼女はウィーンの宮廷へと赴き、音楽家として、名声を、高めていく。その途上でもさまざまな人物と出会い、恋と、陰謀と、試練に、直面する。
裏切った幼なじみアンゾレートへの断ちがたい未練。狂気の青年貴族アルベールの深く純粋な愛。そして芸術家として、自立して生きたいという、コンシュエロ自身の強い願い。それらのあいだで、彼女は、揺れ動きながらも、自らの道を、選び取っていく。
貧しい歌姫が天与の才能と、誠実な心を武器に、ヨーロッパを遍歴し、恋と芸術と運命に、立ち向かっていく。芸術家としての女性の自立と成長を、壮大な歴史ロマンとして描いて、この大作は、続篇へと続いていく。