レリア

作者
ジョルジュ・サンド
成立
1833
フランス
時代
19世紀

概要

愛に絶望し、生の意味を問い続ける女を描いた、ロマン主義的な問題作である。

ジョルジュ・サンドは、男装し、自由に生き、恋愛を重ねた、十九世紀を代表する女性作家である。この『レリア』は、その初期の最も内省的で、大胆な作品にあたる。

主人公レリアは美しく、聡明で、情熱的な女である。だが彼女は愛によって、幸福を得ることが、できない。 官能の喜びを感じられず、恋にも、人生にも、深い虚無と懐疑を、抱えている。

レリアを、熱烈に愛する、若い詩人ステニオがいる。だがレリアはその純粋な愛に、応えることができない。彼女は愛を渇望しながら、同時に愛を信じられず、絶望している。 レリアの妹で、快楽に生きる高級娼婦プルチェリや、禁欲的な僧マニャニなど、対照的な人物たちが、彼女を取り巻く。

物語は明確な筋よりもレリアの生と愛と信仰と死をめぐる、激しい内面の独白によって、進んでいく。女はなぜ幸福になれないのか。愛とは生とは何なのか。 レリアは、答えの出ない問いを、問い続ける。

当時の社会で、女性が、これほど大胆に、愛への懐疑と、生の虚無を語ったことは、大きな衝撃と、非難を、引き起こした。

文学史における評価と影響

ジョルジュ・サンドの初期を代表する問題作であり、フランス・ロマン主義文学の大胆な達成の一つとされる。

この作品の衝撃は女性が、愛への懐疑と、生の虚無を、公然と語った点にある。当時、女性は、愛と結婚のうちに、幸福を見出すべきものとされていた。だがレリアは愛によって満たされず、官能の喜びも得られず、生に、深い絶望を抱く。 その大胆な告白は、当時の道徳を、激しく揺さぶった。

主題は女性の満たされぬ魂の苦悩である。レリアは美貌も知性も情熱も持ちながら、幸福になれない。愛を渇望しながら、愛を信じられない。 この引き裂かれた魂の苦しみは、ロマン主義的な「世紀病」の女性版ともいえる。

男性中心の恋愛観への異議申し立てとしても読める。サンド自身、自由な恋愛と、独立した生を生きた女性だった。レリアの愛や社会の枠に収まらぬ苦悩は、女性の自我の問題を、いち早く提起したものだった。

発表当時はその大胆さゆえに、激しい非難を浴びた。だが女性の内面を、これほど深く大胆に掘り下げた作品は、当時、まれだった。 サンドの思想的な作家としての一面を示す、重要な作品として、読み継がれている。

あらすじ

主人公レリアは、この上なく美しく、聡明で、情熱的な女である。だが彼女の心には深い虚無が、巣くっていた。

若い詩人ステニオがこのレリアを、熱烈に、純粋に、愛している。彼にとって、レリアは、理想の女性であり、詩の女神だった。だがレリアはその一途な愛に、心から応えることが、できない。

というのもレリアは愛によって、幸福を得られない女だったからである。かつての恋愛の失望からか、あるいは、生まれつきの資質からか、彼女は、官能の喜びを、感じることができない。そして恋にも人生にも宗教にも、深い懐疑と絶望を、抱いていた。 彼女は、愛を、切実に求めながら、同時に愛の可能性を、信じられずにいた。

レリアの周囲には対照的な人物たちが、配される。彼女の妹、プルチェリは、快楽と官能に生きる、高級娼婦である。姉が得られぬ肉体の喜びを、妹は、思うままに享受している。また禁欲的な生を選んだ、僧マニャニは、レリアに、信仰による救いを、説こうとする。

だがレリアは快楽にも信仰にも、安住できない。彼女はあらゆる答えを、退けながら、なお生と愛の意味を、問い続ける。

物語ははっきりとした筋を、たどらない。むしろレリアの激しい内面の独白が、作品の中心をなす。女はなぜ、幸福になれないのか。愛とは何か。生きることに、意味は、あるのか。神はいるのか。レリアは答えの出ない、これらの問いを、情熱的に、絶望的に、問い続ける。

ステニオは応えてくれぬレリアへの愛に、絶望し、しだいに身を持ち崩していく。純粋だった若い詩人は堕落し、退廃へと、沈んでいく。

レリア自身も救いを見出せぬまま、悲劇的な運命へと、向かっていく。

愛への渇望と、愛への懐疑。生への情熱と、生への絶望。その引き裂かれた魂の苦悩を、女性の視点から、大胆に、激しく描いて、この問題作は閉じられる。

作者

登場する文学史