メアリー・シェリー

肩を出した黒い衣装をまとい、椅子に座るメアリー・シェリーの油彩肖像画。
リチャード・ロスウェル筆
原綴
Mary Shelley
生没
1797–1851
出身
ロンドン
本名
メアリー・ウルストンクラフト・ゴドウィン
イギリス
時代
ロマン主義

生涯

1797年、ロンドンに生まれた。両親はいずれも急進的な思想家だった。母は、女性の権利を説いた先駆者メアリ・ウルストンクラフトで、メアリーを産んで間もなく世を去った。父は思想家ウィリアム・ゴドウィンである。知的で自由な空気のなかで育った。

十六歳のとき、詩人パーシー・シェリーと恋におち、駆け落ちした。世間の非難を浴びながら、二人はともに暮らした。その関係は、のちに正式な結婚に至る。

十八歳の夏、スイスのレマン湖畔で、シェリーやバイロンらと過ごした。悪天候で室内にこもるなか、めいめいが怪奇な物語を書こうという遊びが始まった。ここで着想されたのが『フランケンシュタイン』である。その後、夫の水死という悲劇に見舞われながらも、著述を続けた。1851年に没した。

作風

メアリー・シェリーの代表作『フランケンシュタイン』の核心は、人間が生命を作り出すという主題にある。若い科学者が、死体を組み合わせて生命を吹き込み、人造の存在を生み出す。だが、その醜い姿に恐れをなし、科学者は自らの創造物を見捨てる。この、創造とその放棄が、悲劇の始まりとなる。

この物語は、科学の力への問いをはらむ。人間は、自然の領域に踏み込み、生命そのものを作り出すことができるのか。そして、作り出したものに対して、どのような責任を負うのか。産業革命と科学の進歩の時代に、その光と影を、いち早く物語のかたちで問うた。

見捨てられた怪物への共感も、作品の深みをなす。怪物は、生まれつき邪悪なのではない。人々に忌み嫌われ、孤独と拒絶のなかで、しだいに憎しみを募らせていく。誰が本当の怪物なのか、という問いが、読者に突きつけられる。

作品

フランケンシュタイン(1818年)

若い科学者フランケンシュタインが、人造の生命を作り出し、それを見捨てたことから始まる悲劇を描いた小説である。創造の傲慢と、その責任、そして拒絶された者の孤独と復讐を主題にした。近代の空想科学小説とゴシック小説の、記念碑的な作品にあたる。なお「フランケンシュタイン」は、怪物ではなく、それを作った科学者の名である。

このほか、疫病によって滅びゆく人類の最後を描いた『最後の人間』など、先駆的な着想の作品を残している。

文学史における立ち位置と影響

メアリー・シェリーは、『フランケンシュタイン』ただ一作によって、文学史に大きな位置を占める。人間が科学の力で生命を作り出すという主題は、それまでの文学にはなかった、まったく新しいものだった。この作品は、近代の空想科学小説(SF)の源流とされる。

その主題は、時代を越えて生き続けている。科学技術が、人間の手に負えない力を生み出すことへの不安。作り出したものへの責任という問い。これらは、二十世紀以降、科学がいっそう強大になるにつれ、ますます切実なものとなった。フランケンシュタインの物語は、そのたびに新しく読み直されてきた。

怪物を生み出した科学者の名は、今日、暴走する技術の象徴として、広く人々に知られている。一つの物語が、時代の根源的な不安をとらえた稀有な例である。

作品

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