小林多喜二
- 生没
- 1903–1933
- 国
- 日本
- 時代
- 近代
何をやったか
蟹工船(一九二九年)を書いた。蟹工船という船上の缶詰工場での過酷な労働と、労働者が団結していく過程を描いた作品である。
特徴的なのは、特定の主人公を置かない点である。労働者の集団そのものが主体として書かれており、これは個人の内面を追う私小説とは対極の方法である。
銀行員として働きながら執筆し、労働運動に関わった。作品は当時の検閲下で伏字だらけで刊行されている。
一九三三年、特別高等警察に検挙され、その日のうちに死亡した。 拷問によるものとされる。二十九歳だった。
文学史における位置
プロレタリア文学を代表する。一九二〇年代後半に高揚したこの運動の中で、最も広く読まれた作品を残した。
蟹工船は二〇〇八年前後に再び読まれ、ベストセラーになった。 非正規雇用や労働条件の悪化が社会問題化した時期と重なったためである。八十年前の作品が現代の状況の比喩として読まれたという受容のされ方は珍しい。
彼の死は、文学が生命に関わる時代があったことを示す事実として語り継がれている。この時期、多くの作家が思想弾圧のもとで転向を強いられた。
なお、プロレタリア文学は政治的な主張が作品の質を規定するという批判を長く受けてきた。文学としての評価と、歴史的資料としての価値をどう切り分けるかは議論が続いている。
代表作
- 蟹工船(一九二九年)— 代表作
- 『一九二八年三月十五日』(一九二八年)— 治安維持法による検挙を描いた
- 『党生活者』(死後の一九三三年)
何から読むか
蟹工船が短く、主題も明確である。百ページ程度で読める。
伏字のある初出版を復元した校訂本もあり、検閲がどう働いたかを確認できる。
著作権保護期間が満了しているため、青空文庫で読める。