カリマコス
- 原綴
- Callimachus
- 生没
- 前310頃–前240頃
- 出身
- 北アフリカ・キュレネ(現・リビア)
- 国
- ギリシャ
- 時代
- ヘレニズム期
生涯
前310年ごろ、北アフリカのギリシャ人植民都市キュレネ(現・リビア)に生まれた。当時、学問と文芸の中心は、エジプトのアレクサンドリアだった。カリマコスもこの街に移り、プトレマイオス朝の王の庇護のもとで活動した。
アレクサンドリアには、古代世界最大の図書館があった。カリマコスは、この図書館の膨大な蔵書を整理し、著者と作品を分類した目録を作った。これは、図書の分類という営みの、最も早い体系的な試みの一つとされる。詩人であると同時に、第一級の学者だった。
多くの詩を書いたが、そのほとんどは断片としてしか伝わっていない。同じアレクサンドリアで活動した詩人アポロニオス・ロディオスとは、詩のあるべき姿をめぐって、有名な論争をかわしたと伝えられる。前240年ごろに没した。
作風
「大きな書物は、大きな災いである」。カリマコスのこの言葉が、その詩の理想をよく示している。ホメロス以来の長大な英雄を、カリマコスはもはや時代遅れとみなした。だらだらと長い詩ではなく、簡潔で、機知に富み、細部まで彫琢された、小さな詩こそが理想だと説いたのである。
学識が、その詩を支えている。神話や地方の伝承、珍しい故事に関する、深い知識が、詩のいたるところに織り込まれている。ありふれた物語を平明に語るのではなく、あまり知られていない異説や、事物の起源を、博識をこめてうたう。教養ある読者に向けた、知的な詩である。
代表作『アイティア(原因譚)』は、この作風をよく示す。さまざまな儀式や習慣、地名の「起源」を、神話や伝承にさかのぼって説明する、断片的な詩を集めたものである。物語そのものよりも、その背後にある由来への、学者的な関心が詩になっている。
作品
『アイティア(原因譚)』
さまざまな儀式、風習、地名などの「起源(アイティオン)」を、神話や伝承をたどってうたった詩集である。断片としてしか伝わっていないが、カリマコスの博識と、洗練された詩法を示す代表作とされる。
『賛歌(Hymnoi)』
神々をたたえる六篇の賛歌である。古い賛歌の形式を借りながら、機知と学識をこめて、洗練された詩に仕立てた。カリマコスの完全な形で残る、数少ない作品にあたる。このほか、多くの気の利いた短詩(エピグラム)も残している。
文学史における立ち位置と影響
短く、洗練された詩を理想とするカリマコスの主張は、長大な叙事詩が支配してきたギリシャ詩の流れを、大きく転換させた。以後の詩は、規模の大きさよりも、細部の完成度と機知を重んじる方向へ向かう。ヘレニズム時代を代表する詩人である。
その影響は、ギリシャにとどまらなかった。ローマの詩人たちが、カリマコスを熱心に手本とした。とりわけ、洗練と技巧を重んじるローマの抒情詩・恋愛詩は、カリマコスの理想を受け継いでいる。ウェルギリウスやホラティウスといった詩人も、その恩恵に浴した。
学者と詩人を兼ねるそのあり方も、後世に一つの型を示した。深い学識に裏打ちされた、知的で洗練された詩という理想は、ヨーロッパの詩の伝統に、長く生き続けている。