ブヴァールとペキュシェ

原題
Bouvard et Pécuchet
作者
ギュスターヴ・フローベール
成立
1881
フランス
時代
19世紀

概要

1881年に刊行された未完の長篇小説である。フロベールは1872年から死の直前まで書き続け、第一部の途中で中断した。

主人公は二人の筆耕——書類を清書する事務員である。ブヴァールとペキュシェは、どちらも四十七歳で、パリのベンチで偶然隣り合う。帽子に同じように名前が書いてあることから話が始まり、意気投合する。

まもなくブヴァールに遺産が入る。二人は職を辞し、ノルマンディーの村に農園を買って移り住む。そこで、農業、園芸、化学、医学、地質学、考古学、歴史、文学、政治、恋愛、体操、心霊術、哲学、宗教、教育を順に試みる。

そのすべてに失敗する。原因は二人の不器用さだけではない。本を読むほど、書いてあることが互いに食い違う。権威ある書物が正反対のことを述べている。

フロベールは1872年から本格的に書き始めた。執筆のために膨大な読書をしている。農業、医学、化学、宗教、教育——扱うすべての分野の書物を読み、その数は千五百冊を超えたと言われる。二人が失敗する根拠を正確に書くために必要だった。フロベールは友人への手紙で、この作業の苦痛を繰り返し訴えている。

同じ時期に姪の夫の事業が破綻し、フロベールは自分の財産の大半を援助にあてた。生活は苦しくなり、この作品は行き詰まった。1877年に三つの物語を書いたのは、その中断のあいだにあたる。

1880年5月、フロベールは脳出血で急死した。第二部は書かれていない。

構想では、第二部で二人が写字を始め、その写した内容がそのまま提示されるはずだった。フロベールは生涯にわたって、世間で当然のように語られる決まり文句を集めており、それを第二部に置く予定だったとされる。この資料は後に『紋切型辞典』として別に刊行された。「文学——弁護士の暇つぶし」「日本——ここではあらゆるものが陶器でできている」といった項目が並ぶ。

文学史における評価と影響

標的は人間の知の全体にある。二人はあらゆる分野を試み、すべてに失敗する。だが失敗の原因は、二人が愚かだからだけではない。書物と書物が矛盾し、権威が正反対のことを述べる。知識は積み上げるほど混乱する。19世紀の進歩と科学への信頼を、フロベールは根本から疑った。

同時に、二人への扱いは単純な嘲笑ではない。ブヴァールとペキュシェは真剣である。知りたいと願い、試み、失敗し、また試みる。この姿勢を滑稽とだけ見るか、ある種の誠実さと見るかで、作品の印象が変わる。

結末の扱いも論じられてきた。あらゆる知を試し尽くした二人は、判断も理解も放棄して、ただ書き写す作業に戻る。この結末は20世紀の文学に繰り返し引かれてきた。ボルヘスはフロベールのこの作品を論じ、二人を近代の知の状況を体現する人物として扱っている。

未完であることも作品の性格の一部になっている。あらゆる体系が破綻する小説が、それ自体、完成されないまま途切れる。

ボヴァリー夫人の薬剤師オメーが、進歩と科学を口にする俗物として書かれていたことも、この系譜にある。フロベールが「紋切型」——考えずに繰り返される決まり文句——を生涯の敵としていたことの最後の集大成にあたる。

あらすじ

1838年、暑い日曜のパリ。ブールドン大通りのベンチで二人の男が隣り合う。ブヴァールは商社のペキュシェは海軍省の筆耕である。話してみると、考えることが同じだと分かる。以後、毎日会うようになる。

数年後、ブヴァールの伯父——実は父——が死に、遺産が入る。二人はカルヴァドス県シャヴィニョルに農園を買い、移り住む。

農業。本を読んで最新の農法を試す。堆肥の配合を変え、収穫を早めようとする。麦は実らず、刈り取って積み上げた干し草が発酵して燃え上がる。

園芸。庭木を孔雀や鹿の形に刈り込み、珍しい果樹を植える。招いた客に披露するが、料理も庭も笑われる。

化学。実験を始め、蒸留の途中で装置を爆発させかける。

医学。解剖学の本を読み、村人を診察し始める。診立ては当たらない。村の医者と対立する。

地質学と考古学。化石を探し、古物を集める。貴重な発見だと思ったものが、ただの石や後世の贋物と分かる。

歴史。史書を読む。同じ事件について、書物ごとに記述が違う。どれが本当かを決める方法がない。二人は混乱する。

文学。小説を読み、戯曲を書こうとする。美学の規則を探すが、書物ごとに違う規則が掲げられている。

政治。1848年の二月革命が起きる。二人は熱中し、演説をし、党派に加わる。革命は挫折し、二人は幻滅する。

恋愛。それぞれ試みる。ブヴァールは未亡人に財産を狙われる。ペキュシェは若い女中と関係を持ち、性病をうつされる。

体操、心霊術、催眠術、骨相学。流行の術に次々と手を出す。

哲学。スピノザとヘーゲルを読む。理解できない。虚無に陥り、二人は首を吊ろうとする。その直前、教会の鐘の音を聞いて思いとどまる。

宗教。今度は信仰に向かう。だが聖書を精読すると、矛盾が次々に見つかる。

教育。村の孤児二人を引き取り、あらゆる教育法を試す。子どもたちは盗みを働き、嘘をつき、まったく改まらない。

村人からは危険人物とみなされ、当局に目をつけられる。孤立した二人は話し合い、一つの結論に達する。昔のように写すことにしよう。

二人は特注の大きな二重机を作らせ、向かい合って座り、手当たり次第に書き写し始める。

原稿はここで途切れる。

作者

登場する文学史