アルコール

原題
Alcools
作者
ギヨーム・アポリネール
成立
1913
フランス
時代
20世紀以降

概要

ギヨーム・アポリネールが、1898年から1913年までの十五年間に書いた詩をまとめた詩集である。全50篇。

この詩集で最もよく語られるのが、句読点がまったく無いことである。校正刷りの段階までは打たれていたが、刊行の直前に著者がすべて削除した。どこで切って読むかは読者に委ねられ、語のつながりが揺らぐ。息継ぎの位置が定まらないことで、詩は流れ続ける。

もう一つの特徴が、古いものと新しいものの同居である。中世以来の恋の嘆きや、伝統的な韻律と脚韻が保たれる一方で、飛行機、エッフェル塔、電線、汽車といった当時の新しい事物が、同じ詩の中に置かれる。過去への郷愁と、機械の時代への熱狂とが、切り離されずに並ぶ。

配列は書かれた順ではない。恋の破局を扱った詩が各所に散り、詩集全体が一つの喪失の記録のようにも読める。

文学史における評価と影響

刊行当時の反応は割れた。句読点の欠如は奇をてらったものと批判され、一方で若い詩人たちには衝撃を与えた。

今日では、19世紀の詩と20世紀の詩をつなぐ結節点として位置づけられている。ボードレール以来の抒情の系譜を受け継ぎながら、詩の形そのものに手を加えた点が評価される。句読点の廃止は、後の詩人が改行や配置を自由に扱う道を開いた。

続く詩集カリグラムで、アポリネールは文字を絵の形に組む実験へ進む。その出発点がこの詩集にある。

内容

巻頭に置かれた「地帯(ゾーン)」は、パリの街を朝から翌朝まで歩き回る長詩である。「ついにおまえはこの古い世界に飽きた」と始まり、キリスト教の伝統、飛行機、移民の群れ、過去の恋が、切れ目なく流れ込む。詩集全体の調子を決める一篇になっている。

最もよく知られるのが「ミラボー橋」である。橋の下をセーヌが流れ、恋も過ぎ去っていく。「日は暮れよ鐘は鳴れ/月日は流れわたしは残る」という句が繰り返され、時間だけが進み、自分だけが取り残される感覚を刻む。画家マリー・ローランサンとの別れが背景にあるとされる。

ほかに、ライン地方に滞在した時期の詩群や、恋人アニーを歌った詩などを収める。

作者

登場する文学史