フランシス・ベーコン

黒い高帽と大きな白いひだ襟をつけ、赤い背景の前に立つフランシス・ベーコンの油彩肖像画。
1617年、大法官時代の肖像
原綴
Francis Bacon
生没
1561–1626
出身
ロンドン
イギリス
時代
ルネサンス

生涯

1561年、ロンドンの高官の家に生まれた。法律家・政治家として着実に地位を上げ、1618年には最高位の官職である大法官にのぼった。だが1621年、収賄の罪に問われて職を追われ、公職から退く。以後は著述と自然の研究に力を注いだ。

寒さが物を腐りにくくするかを確かめようと、雪を鶏に詰める実験を野外で行い、それがもとで体を冷やして病み、1626年に世を去ったと伝えられる。事実を自分の手で確かめようとする姿勢が、その最期にも表れている。

作風

一つは、無駄をそぎ落とし、格言のように言い切る簡潔な散文である。もう一つは、思索の方法そのものへの関心で、これが哲学の著作に結晶した。

中世の学問が、権威ある書物から理屈を積み上げる演繹に頼っていたのに対し、ベーコンは順序を逆にする。まず自然を先入観なく観察し、多くの事実を集め、そこから一般の法則へと昇っていく——この帰納の方法こそが、自然を正しく知る道だと説いた。

作品

『随筆集(Essays)』は、「読書について」「復讐について」といった主題ごとに、経験から得た知恵を短くまとめた文章を集める。個人の考えを短い散文につづるこの形式を、英語で確立した書物である。1597年に初版が出て、生涯にわたって増補された。

哲学の主著『ノヴム・オルガヌム(Novum Organum)』では帰納の方法を体系的に論じ、『学問の進歩(The Advancement of Learning)』では諸学問の全体を見渡して、経験にもとづく知の刷新を訴えた。

文学史における立ち位置と影響

ベーコンは、英語エッセイという文学形式の祖である。主題を立てて短くまとめるその型は、後の随筆・評論の書き方の土台になった。

同時に、観察と実験を重んじる帰納の思想は、近代科学の方法の礎の一つになり、後のイングランドの科学者の集まりや、18世紀の啓蒙思想へとつながっていく。文学と科学思想の双方に、大きな足跡を残した。

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