ジャック・プレヴェール
- 原綴
- Jacques Prévert
- 生没
- 1900–1977
- 出身
- パリ近郊ヌイイ=シュル=セーヌ
- 国
- フランス
- 時代
- 20世紀以降
生涯
1900年、パリ近郊に生まれた。家は貧しく、正規の学業は早くに切り上げている。若い頃、シュルレアリスムの集まりに加わったが、ブルトンと衝突して離れた。
1930年代からは演劇の集団に関わり、社会批判を込めた芝居を書く。やがて映画の世界へ移り、監督マルセル・カルネと組んで数々の脚本を手がけた。とりわけ『天井桟敷の人々』(1945年)は、フランス映画の代表作とされる。
1946年、それまで雑誌や新聞に散らばっていた詩をまとめた詩集『パロール』が刊行されると、爆発的に売れた。詩集としては異例の部数で、以後フランスで最も広く読まれる詩人の一人になる。1977年に没した。
作風
用いるのは、日常の話し言葉である。難しい語も、凝った比喩も使わない。短い行を重ね、同じ語を繰り返し、リズムで進めていく。
主題は、貧しい人々の暮らし、恋人たち、子ども、そして戦争や権威への怒りである。学校の規律や、教会や、軍隊を、皮肉と笑いで撃つ。感傷と諧謔が同居し、平明でありながら底に苦味がある。
シュルレアリスムから受け継いだ、意表を突く語の組み合わせも残っている。ただしそれは無意識の探究のためではなく、笑いと批評のために使われる。
作品
詩集『パロール』(Paroles、1946年)が代表作である。「劣等生」は、教室で教師に逆らう子どもを描き、黒板に幸福の絵を描いてしまう場面で終わる。「朝食」は、恋人が黙って出ていくまでを、コーヒーを注ぐ動作の描写だけで書き切る。
多くの詩に曲がつけられ、シャンソンとして歌われた。ジョゼフ・コズマが作曲した「枯葉」は、そのなかでも世界的に知られている。
映画の脚本では『霧の波止場』『天井桟敷の人々』などがある。
文学史における立ち位置と影響
プレヴェールは、20世紀フランスで最も広く読まれた詩人である。教科書に載り、シャンソンとして歌われ、詩を読み慣れない人にまで届いた。
その位置づけは、同時代の難解な詩の潮流と対照的である。マラルメ以来、フランスの詩は言葉の自立を追って読者を選ぶ方向へ進んだが、プレヴェールは逆に、話し言葉で誰にでも届く詩を書いた。詩が専門化していく流れの外で、大衆と詩をつなぎ直した存在といえる。
その平明さゆえに、批評の世界では長く軽く扱われてきた。読者の広さと、専門的な評価との落差が大きい詩人でもある。