ジェイン・オースティン
- 生没
- 1775–1817
- 国
- イギリス
- 時代
- ロマン主義
何をやったか
田舎の中流階級の日常だけを書いた。 舞台は限られた地域、主題は結婚と財産と階級である。事件らしい事件は起こらない。
その狭い範囲で、会話と自由間接話法によって人物の心理を精密に描いた。 語り手が人物の思考に寄り添いながら、同時に距離を取って皮肉る。この技術はギュスターヴ・フローベールより半世紀早い。
高慢と偏見(一八一三年)は、偏見を持った女性と高慢な男性が互いへの誤解を解いていく話である。冒頭の一文(財産のある独身男性は妻を必要としている、という「普遍の真理」)は、皮肉の宣言として機能している。
生前は匿名で出版し、評価も限られていた。四十一歳で没している。
文学史における位置
ロマン主義の時代に、ロマン主義と無縁の小説を書いた。 バイロンらが情熱と異国と反逆を歌っていた時期に、オースティンは応接間の会話を書いている。同時代性で括ることの危うさを示す例である。
ナポレオン戦争のさなかに書かれていながら、作品に戦争はほとんど出てこない。 これを限界と見るか、意図的な選択と見るかで評価が分かれてきた。
十九世紀を通じて評価は限定的だったが、二十世紀に入って急上昇した。現在では英語圏で最も読まれ、最も映像化される小説家の一人である。
小説技術の面では、自由間接話法の早い使用例として文学史上の位置が確立している。
代表作
- 『分別と多感』(一八一一年)— 最初に出版された作品
- 高慢と偏見(一八一三年)— 代表作
- 『エマ』(一八一五年)— 語りの技術が最も高度とされる
- 『説得』(死後の一八一七年)— 円熟期の作品
何から読むか
高慢と偏見が定番である。筋が明快で、会話が面白く、皮肉が分かりやすい。
『エマ』は技術的な完成度が高いが、主人公の思い込みを読者が見抜く構造のため、慣れが要る。
この先へ
- 時代の中で見る: イギリス文学 ロマン主義