寓話
- 原題
- Fables
- 作者
- ジャン・ド・ラ・フォンテーヌ
- 成立
- 1668
- 国
- フランス
- 時代
- 17世紀
概要
動物を主人公にした短い物語詩を集めた本である。1668年に第一集が出て、以後1694年まで三度にわたって書き継がれ、全十二巻・約240篇になった。
素材は古代ギリシャのイソップ、ローマのパエドルス、さらにインドの説話集などから取られている。だがラ・フォンテーヌは、それを翻訳したのではない。短い教訓話に、場面の描写と人物(動物)の性格を書き込み、会話を与えて、詩として作り直した。
詩法にこの本の特色がある。当時の詩は(十二音節)で書くのが正式だったが、ラ・フォンテーヌは行の長さを一篇の中で自在に変えた。緊張する場面では短く畳みかけ、悠長な場面では長く伸ばす。脚韻の並べ方も一定にしない。規則が厳しく定められた古典主義の時代にあって、例外的にしなやかな詩になっている。
文学史における評価と影響
フランスで最も広く読まれ、暗誦されてきた詩の一つである。学校教育を通じて世代から世代へ受け継がれ、「アリとキリギリス」「カラスとキツネ」といった話は、多くのフランス人が子どもの頃に覚える。
同時に、単なる子ども向けの教訓話ではない。動物に演じさせているのは、宮廷の権力関係、上に立つ者の横暴、弱い者の狡さといった、当時の社会の力学である。動物という仮面を用いることで、直接には言えない批判を書いたとも読める。第二集以降になるほど、その調子は皮肉で苦くなる。
日本では、明治期の翻訳を通じて『イソップ物語』とあわせて広まった。
内容
第一巻の冒頭に置かれるのが「セミとアリ」(日本では「アリとキリギリス」として知られる)である。夏の間歌って過ごしたセミが、冬に困ってアリに食べ物を乞う。アリは「夏に歌っていたのなら、今度は踊ればいい」と冷たく突き放す。教訓を説くというより、突き放したまま終わる。
「カラスとキツネ」では、チーズをくわえたカラスがキツネにおだてられ、いい気になって歌おうとして落とす。「オオカミとコヒツジ」は、上流で水を濁したと難癖をつけてオオカミが子羊を食う話で、「最も強い者の理屈がつねに最善とされる」という一行から始まる。
ほかに「カシとアシ」「田舎のネズミと町のネズミ」など、今日まで慣用句として残る話が多い。